夏のあらし!~春夏冬中~
夏のあらし!~春夏冬中~とは?
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新房昭之監督インタビュー
 

――今回は『夏のあらし!~春夏冬中~』の音楽や本編についてのお話をお聞かせください。そもそも、『夏のあらし!』のさまざまな場面で昭和歌謡をフィーチャーした経緯は?

新房 ハッキリとは覚えていないんだけど、確かに僕が言いだしたことなんですよ(笑)。
「方舟」が喫茶店だったから、「BGMは昭和の歌謡曲がいい」と思ったことがきっかけだったと思います。
何か、この作品のムードを象徴する特徴が欲しかったんですよね。

――もともと歌謡曲はお好きだったのですか?

新房 僕自身はYMO以降、歌謡曲に興味がなくなってしまって、あまり聴いていなかったんですよ。
でも阿久悠さんが亡くなられたのをきっかけに、作品集的なCD(『人間万葉歌~阿久悠 作詞集』、『続・人間万葉歌~阿久悠 作詞集』)が出たり、歌謡曲のアルバムがCDで再発されたり、そういうムードが高まってきたじゃないですか。その時期くらいから、僕の中で歌謡曲を再発見したのだと思うんです。 再発されたCDも買い集めていたし、テレビで昭和歌謡の特集をやっていると、必ず見ていました。その時期と、この『夏のあらし!』の企画打ち合わせの時期が重なったのだと思いますね。それを、キングレコードの宮本純乃介プロデューサーが作品の中で広げてくれたんですよ。
今回嬉しかったのが、由紀さおりさんの「夜明けのスキャット」を作中で真面目に使えたことです。この曲は長らく、バラエティ番組とかでギャグのように使われていたでしょう? 僕はあれがたまらなく嫌だった。この歌はそういう歌じゃないから。音響監督の鶴岡陽太さんも、最高の演出をしてくれていましたね。

――監督が考える、歌謡曲の魅力とは?

新房 メロディと歌詞でしょうね。特にメロディは、他では得難い力強さというか、心にしっかりと残るものが多い気がしています。
面影ラッキーホールの「あたしだけにかけて」も、メロディがしっかりと心に届くものだったから、これは良いなと思った。歌詞にしても、昔はああいうコミックソングが山ほどあったんですよ。粋だったよね。

――第二期となる『夏のあらし!~春夏冬中~』では、80年代の歌謡曲がメインになると聞いています。

新房 その方が、アニメを見てくれている人がもっと喜んでくれるかもしれないな、と思ったからです。
僕自身、YMO関連のテクノ歌謡とかは当時チェックしていたし、スターボーの『STARBOW 1』の紙ジャケ再発とか買いましたからね(笑)。

――『~春夏冬中~』では、主題歌に相対性理論のやくしまるえつこさんが起用され話題を集めています。
「おやすみパラドックス」の作編曲を近田春夫さんが手掛けていたり、シングルのカップリングに高橋幸宏さんがアレンジを手がけたジューシーフルーツのカバー「ジェニーはご機嫌ななめ」が収録されていたりと、やはり80年代テクノポップを彷彿とさせますね。

新房 80年代の音楽や文化が見直されるなんて、80年代当時は思いもしていなかったけどね(笑)。
楽曲回りについては、宮本プロデューサーが若いのに頑張って勉強してくれたところですね。素晴らしい人選で、作品にもピッタリだと思います。
相対性理論もね、初めて聴いたのにどこか懐かしい雰囲気があって、すごく良いですね。やくしまるさんにもお会いしましたけど、すごくシャイな方で、不思議な魅力を持った女の子でした。

――第一期でキッチリとストーリーを完結させた『夏のあらし!』ですが、『~春夏冬中~』ではどのような展開が待っているのでしょうか?

新房 今度は、よりキャラクター一人一人の魅力にフォーカスした、ギャグ要素の強い作風になると思います。 だから、『~春夏冬中~』から見ても楽しめる内容にはなっているし、『~春夏冬中~』でキャラの魅力にハマってくれたら、今度は第一期を見たくなるような、そういう内容ですね。役者のみんなも、第一期で本当に役にハマってくれて、最高だったでしょ? 特にね、生天目(仁美)さんが演じてくれたマスターとか、僕の傍にいてくれないかな? なんて、考えちゃったもん(笑)。だからストーリーを追っていくというよりは、そういうキャラクターの魅力をもっと掘り下げていきます。それが『~春夏冬中~』ですね。

――では、作品の雰囲気もガラリと変わったり……?

新房 もっとポップにはなると思うけど、そこまでガラリとは変わらないと思います。
第一期の時もそうだったんだけど、僕は昔の歌謡曲って、12月31日の真夜中とかに、なんとなくテレビをつけると当時の古い映像と共に流れてくるようなものだと思っているんですよ。当時の竹下通りの映像とか、東京オリンピックとか、大阪万博とか。そういう映像と共に流れてくる懐かしい歌謡曲って、なんとも言えない“まどろみ”がありますよね。そのムードがこの『夏のあらし!~春夏冬中~』で作ることができたなら、僕は成功だと思っています。
最初、シリーズ構成の高山(カツヒコ)さんが考えてくれた最後の標語「明日も元気に早起き」も、僕はどうしようか悩んだんですよ。せっかく深夜にまどろんでいるのに、明日という現実を考えさせちゃうのって、ちょっと酷でしょ? 僕の世代だと、それは日曜にやっていた『宇宙戦艦ヤマト』なんですよ。「すごく見たいのに、これを見たら明日からまた学校だ……」という、複雑な感情ね(笑)。

――すごくよく分かります(笑)。

新房 でも高山さんは、その「明日からまた学校だ……」というあの複雑な感情を、見ている人はきっと懐かしんでくれると考えていたみたいでね。なるほどなぁと思った。
あと僕はね、『宇宙戦艦ヤマト』は、エンディングの「真赤なスカーフ」も哀愁があって、余韻として最高だったと思うんです。あの味わいを知っている僕たち世代の演出家は、きっと『ヤマト』から離れられないんじゃないかなぁ。『夏のあらし~春夏秋冬中~』も、あのムードを作りたいですね。きっと、それを新しいと感じてくれる若い世代もいると思うんですよ。やっぱり、せっかく深夜にやらせて頂くなら、放送される時間の味わい方から、見てくれている人の気分まで、演出に組み込みたい。それが実現できるよう、頑張ります。

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